強まる貿易戦争への警戒感=日本企業、生産体制見直しも

トランプ米政権が保護主義に傾斜する中、日本企業が貿易戦争の激化に警戒感を強めている。米国は日本の基幹産業である自動車・同部品への追加関税を検討。トヨタ自動車は輸出1台当たり6000ドル(約66万円)のコスト増になると試算しており、実現すれば「(業界への)影響は甚大」(日産自動車の田川丈二常務執行役員)だ。上場企業の間で通商摩擦を懸念する声が広がる中、一部では生産体制の見直しを模索する動きも出ている。
米国は3月に鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税を発動。鋼材などの価格上昇が同国で現地生産を進める自動車を中心に製造業の足を引っ張り始めた。トヨタ自動車は、2019年3月期に100億円の減益要因になると想定。農機大手のクボタも18年12月期の業績予想を下方修正した。
自動車・同部品に25%の追加関税がかかれば、打撃は一段と深刻化する。トヨタの米国向け輸出は年約70万台で、1台当たり約66万円のコスト増とすると、影響額は約4600億円に達する計算だ。吉田守孝副社長は「原価アップを賄うことはできない」と値上げを示唆するが、主力の米市場で販売が落ち込む可能性もある。
SUBARU(スバル)の岡田稔明専務は「(米国の)現地生産のスタディー(研究)を真剣にやっている」と述べ、生産計画を柔軟に見直す構えだ。部品業界では、追加関税により、デンソーは最大で年800億円、アイシン精機は同400億円の影響が出る見通し。鋼材を供給する鉄鋼メーカーも「一番気になるのは自動車(への影響)だ」(新日鉄住金の宮本勝弘副社長)と先行きを注視している。
米中が追加関税の報復合戦にのめり込んでいることへの懸念も強い。日立製作所の西山光秋執行役専務は「米工場が中国から仕入れている部品を(同国以外に)切り替えるなど、機動的に対応している」と明かす。
三菱電機の皮籠石斉常務も「中国生産の品目変更を検討している」と説明し、米国向け製品の生産見直しを示唆した。現時点では各社の事業への影響は限定的だが、世界経済の最大のリスク要因だけに、産業界は神経をとがらせている。
◇貿易摩擦に関する日本企業の声
▽トヨタ自動車・吉田守孝副社長
車への追加関税による輸出の原価アップを全て自社で賄うことはできない。ある程度単価に転嫁すると(販売)数は減っていく
▽日産自動車・田川丈二常務執行役員
追加関税がかかれば影響は甚大だ。引き続き(生産や調達の)現地化を進める
▽SUBARU(スバル)・岡田稔明専務
米国は重要な市場。車種など現地生産のスタディー(研究)は真剣にやっている
▽デンソー・松井靖常務役員
追加関税で年 700億~800億円の影響が出る。公正な関税ルールの維持を期待する
▽新日鉄住金・宮本勝弘副社長
一番気になるのは自動車だ。日本からの(米国)輸出(組み立て用部品含む)で350万トンの鋼材が使
われており、影響が大きい
▽日立製作所・西山光秋執行役専務
米国工場が中国から仕入れている部品を(同国以外に)切り替えるなど、機動的に対応している
▽パイオニア・斎藤春光常務
(中国工場の製品の)生産地変更やいろんな対応策を検討していく
▽三菱電機・皮籠石斉常務
中国生産の品目変更を検討している。米中の交渉が暗礁に乗り上げると中長期的な視点で(対応を)考える必要が出てくる